名刺は個人情報にあたる?個人情報保護法での扱いと、交換した名刺へのメール・電話の可否

17Die Card 編集部
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「もらった名刺って、個人情報なんだろうか」——名刺管理アプリを導入しようとした担当者、名刺リストから営業メールを送ろうとした営業、あるいは社内の名刺データを共有しようとした情シスが、一度は立ち止まる問いです。

結論から書くと、名刺は個人情報にあたります。ただし多くの人が本当に知りたいのはそこではなく、その次の「だから何ができて、何ができないのか」のはずです。

この記事では、その問いに一次ソースだけで答えます。参照するのは個人情報保護委員会(PPC)の公式FAQと、e-Gov法令検索で確認できる条文本文です。解説記事の孫引きは使いません。そして、条文やFAQが書いていないことは「書いていない」と明記します——この領域は、そこを曖昧にした解説が一番多いところだからです。

3行サマリー

  1. 名刺は個人情報にあたる(個人情報保護法2条1項)。氏名が載っている以上、例外はない。
  2. 名刺交換で受け取った名刺への「冊子・電子メール」送付は、利用目的の通知・公表義務が免除されうる——個人情報保護委員会が公式FAQ(Q4-16)で明示(出典: 個人情報保護委員会)。
  3. ただしFAQは「電話」に一切触れていない。 電話は個情法ではなく特定商取引法の領域で、BtoBかBtoCかで結論が変わる。

そもそも名刺は個人情報なのか——条文で確認する

結論: 名刺とは、氏名を含む「特定の個人を識別できる情報」であり、個人情報保護法上の個人情報である。 条文で確認します。

個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)2条1項は、個人情報をこう定義しています。

この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。 一 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(中略)により特定の個人を識別することができるもの

名刺には氏名が記載されています。したがって特定の個人を識別できる情報であり、個人情報に該当します。ここに議論の余地はありません。

よくある誤解を2つ潰しておきます。

  • 「会社の情報だから個人情報ではない」は誤り。 会社名・部署・役職は勤務先に関する情報ですが、名刺には氏名が併記されています。氏名がある時点で個人識別性があります。
  • 「公開情報だから自由に使える」も誤り。 個人情報保護法は情報が公知かどうかで適用を分けていません。名刺を受け取って事業に使う以上、個人情報取扱事業者としての義務(利用目的の特定、安全管理措置、第三者提供の制限など)が及びます。

つまり出発点は「名刺=個人情報」で固定です。問題はその先の運用にあります。

本題:名刺交換した相手に、こちらからアプローチしていいのか

結論: 名刺交換で受け取った連絡先への冊子・電子メールの送付は、利用目的の通知・公表義務が免除されうる——個人情報保護委員会が公式FAQで明示しています。 実務で最も知りたい部分に、公式見解が存在します。

同委員会のFAQ「Q4-16」は、設問からしてまさにこの問いです。

Q4-16 名刺交換により取得した連絡先に対して、自社の広告宣伝のための冊子や電子メールを送ることはできますか。

回答は以下のとおりです(原文ママ)。

個人情報取扱事業者の従業者であることを明らかにした上で名刺を交換した場合、相手側は名刺を渡した者が所属する個人情報取扱事業者から広告宣伝のための冊子や電子メールが送られてくることについて、一定の予測可能性があると考えられます。この場合に、従業者が取得した名刺の連絡先に対して自社業務の広告宣伝のための冊子や電子メールを送ることは、「取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合」に該当すると解されます

(出典: 個人情報保護委員会 FAQ Q4-16)

この「利用目的が明らかな場合」とは何の話か

引用の後半にある「取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合」は、個人情報保護法21条4項4号の文言です。同条は、個人情報を取得したときに利用目的を本人に通知または公表しなければならないという義務を定めており、4項がその適用除外を列挙しています。

つまりFAQが言っているのは、正確にはこういうことです。

名刺交換で受け取った名刺に自社の広告宣伝の冊子・メールを送る場合、「当社はいただいた名刺を広告宣伝に利用します」とわざわざ通知・公表しなくてよい

「送ってよい」の根拠として引用されがちですが、条文上の効果は「通知・公表義務の免除」です。 ここを取り違えると、後述する他法令の検討が抜け落ちます。

名刺交換という「取得の状況」が効いている

見落とされがちですが、このFAQの論理の中心は「予測可能性」です。相手が自ら従業者として名乗り、名刺を差し出した——その状況があるからこそ、その後の連絡に予測可能性が生じる、という組み立てになっています。

したがって、この論理は取得経路が変われば当然に及びません

  • 対面で名刺交換した → FAQが正面から扱う場面
  • リストを購入した → 予測可能性の前提がない
  • Webから収集した → 同上
  • ⚠️ 展示会の来場者リストを主催者から受領した → 名刺交換ではなく第三者提供の問題になり、別の検討が必要

なお、このFAQは「展示会」「交流会」といった場面を特記せず、対面での名刺交換一般を対象としています。名刺交換という行為そのものが根拠であって、イベントの種類は関係ありません。

ここからが本題の裏側:FAQは「電話」に一言も触れていない

要点: 前掲FAQが挙げる手段は「冊子」と「電子メール」の2つだけで、電話への言及はゼロ。「メールがOKだから電話も同じ」は公式見解の射程を超えた読み方です。 多くの解説記事が踏み外すのがここです。

上記のFAQが明示的に認めているのは、「冊子」と「電子メール」の2つだけです。回答本文を何度読んでも、電話・架電・テレアポに相当する語は一切出てきません

したがって、「名刺交換した相手にはメールを送っていいのだから、電話も同じだ」と読むのは、条文・FAQの射程を超えた拡張解釈です。 類推の余地はあるにせよ、公式見解が存在すると言うことはできません。ここは正直にグレーゾーンとして扱うべき箇所です。

そしてFAQ自身が、末尾でこう釘を刺しています。個人情報保護法をクリアしても、特定電子メール法の受信拒否対応や、通信販売等を行う場合の特定商取引法の規制など、他法令の遵守が別途必要である、と。

つまり電話については、個人情報保護法ではなく別の法律を見に行く必要があるわけです。

電話の場合:特定商取引法を見る(BtoBとBtoCで結論が変わる)

電話勧誘に固有の規律は、特定商取引法(特定商取引に関する法律)にあります。要点は3つです。

① 事前に告げなければならない4項目(16条)

第十六条(電話勧誘販売における氏名等の明示)販売業者又は役務提供事業者は、電話勧誘販売をしようとするときは、その勧誘に先立つて、その相手方に対し、販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称及びその勧誘を行う者の氏名並びに商品若しくは権利又は役務の種類並びにその電話が売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げなければならない。

告知が必要なのは、①事業者の氏名(名称)②勧誘を行う者の氏名 ③商品・権利・役務の種類 ④勧誘目的である旨の4つです。

② 断られたら再勧誘してはならない(17条)

第十七条 販売業者又は役務提供事業者は、電話勧誘販売に係る売買契約又は役務提供契約を締結しない旨の意思を表示した者に対し、当該売買契約又は当該役務提供契約の締結について勧誘をしてはならない。

一度断られた相手への勧誘継続・再勧誘は禁止です。実務上は、断りの意思表示を記録し、再架電を止める運用(いわゆるDNC=Do Not Call管理)が必要になります。

ただし条文を正確に読むと、禁止されているのは「当該売買契約又は当該役務提供契約」についての勧誘です。全社一律・永久の架電禁止は法の最低要件より厳格な運用であり、逆に別商材での再架電が直ちに違法になるとも限りません。

③ そしてBtoBには、原則としてこれらが適用されない(26条1項1号)

ここが最も実務的な帰結です。

第二十六条 前三節の規定は、次の販売又は役務の提供で訪問販売、通信販売又は電話勧誘販売に該当するものについては、適用しない。 一 (中略)申込みをした者が営業のために若しくは営業として締結するもの又は購入者若しくは役務の提供を受ける者が営業のために若しくは営業として締結するものに係る販売又は役務の提供

「前三節」には電話勧誘販売の章(16条〜25条)が含まれます。したがって、相手が営業のために/営業として契約を締結するBtoB取引であれば、16条の事前告知も、17条の再勧誘禁止も、書面交付義務も、クーリング・オフも、原則として適用されません

消費者庁の逐条解説も「本法が一般消費者を保護するための法律であるので、通常、事業・職務の用に供するために購入し、又は役務の提供を受ける場合は本号に該当する」としています。

ただし2つ、重要な留保があります。

  • 判定基準は契約の目的であって、架電行為ではない。 架電した時点では除外に当たるかどうかが確定していません。「BtoBだから何をしてもよい」という免罪符ではありません。
  • 形式ではなく実質で判断される。 同解説は「一見事業者名で契約を行っていても、購入商品や役務が主として個人用・家庭用に使用するためのものであった場合は、原則として本章の規定は適用される。特に実質的に廃業していたり、事業実態がほとんどない零細事業者の場合には、本章の規定が適用される可能性が高い」と明記しています。個人事業主や零細事業者への架電は、除外を当てにしない方が安全です。

AIが電話をかける場合、「AIです」と言う義務はあるのか

要点: 特定商取引法にAI・自動音声の告知義務は存在しません。ただし法的義務の不在と、告げるべきかどうかは別の問題です。

特定商取引法上、明文の義務はありません。 前掲16条が求める告知は4項目のみで、条文中に「AI」「自動音声」「録音」「機械音声」に相当する記載は存在しません。同法の最新改正・通達を確認しても、AI・自動音声の明示義務を追加した改正は見当たりません。

これは米国と対照的です。米国ではFCCが2024年2月、AI生成音声を電話消費者保護法(TCPA)上の「artificial voice」に当たると解する判断を示しており、規制の前提が異なります。

ただし、法的義務がないことと、告げないことが望ましいことは別問題です。 総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」は透明性を原則に掲げており、「日本にはAI告知義務が一切ない」と単純化するのは危険です。相手に不信感を与えれば、法令以前にビジネス上の損失になります。

整理:名刺データの利用可否 早見表

やること 個人情報保護法上の扱い 別に確認すべき法令
名刺を受け取って保管する 個人情報の取得。利用目的の特定・安全管理措置が必要
名刺交換相手に冊子・メールを送る FAQ Q4-16により通知・公表義務が免除されうる 特定電子メール法(受信拒否対応)
名刺交換相手に電話をかける FAQに記載なし=公式見解が存在しない 特定商取引法(BtoBは26条1項1号で原則除外)
購入リストにメール・電話をする Q4-16の予測可能性の前提を欠く 特定電子メール法・特定商取引法
名刺データを社外に渡す 第三者提供の制限(原則本人同意)

(本表は本記事執筆時点で確認できた一次ソースに基づく整理であり、個別事案の適法性を保証するものではありません。判断に迷う場合は専門家にご確認ください。)

実務でやっておくべきこと

法令の話を運用に落とすと、やることは多くありません。

  1. 利用目的を自社サイトに公表しておく。 FAQにより通知・公表義務が免除されうるとはいえ、プライバシーポリシーに「お預かりした名刺情報を自社サービスのご案内に利用する場合があります」と書いておく手間はごくわずかです。免除に頼るより、書いておく方が強い。
  2. 取得経路を名刺データに残す。 「対面で名刺交換」なのか「リスト購入」なのかで適用される論理が変わる以上、どこで取得したかを記録していないと、後から適法性を説明できません。交換日・イベント名を残しておくことは、フォローの口実になるだけでなく、コンプライアンス上の記録でもあります。
  3. 断りの意思表示を記録し、再アプローチを止める。 BtoBで法的義務がない場合でも、運用として持つべきです。
  4. 社外への提供は同意なしにやらない。 第三者提供の制限は名刺にもそのまま及びます。
  5. 不要になった名刺は復元不可能な方法で処分する。 そのままゴミ箱はNGです。具体的な捨て方は名刺の処分・破棄の正しい方法にまとめています。

このうち 2番が、実は最も抜けやすく、最も後から取り返せない項目です。紙の名刺を輪ゴムで束ねている限り、取得経路も取得日も記録されません。

具体例:取得日・取得経路が自動で残る Die Card

宣伝を含むので事実だけ書きます。当メディアの運営元が提供する名刺OCRツール Die Card は、名刺をスマホで撮るとAIが会社名・氏名・部署・役職・メール・電話・携帯・FAX・郵便番号・住所・URL・備考の12項目を自動でリスト化します。机に並べて撮った1枚の写真に複数の名刺が写っていても名刺ごとに分けて読み取り、読み取り信頼度(高/中/低)が名刺ごとに出るので、自信のない名刺だけその場で直せます。

このとき追加日が各連絡先に自動で記録されるため、前述の「取得日を残す」が意識せず満たされます。プレミアムプラン(テスト価格・月5,000円、年契約なら月4,000円)ではお礼メールの自動送信・開封確認・ステップメールにも対応します。

なおデータの持ち出しは無料枠でもCSV、有料ではExcel/Google Sheetsで可能です。顧客名簿という重要な個人情報を、いつでも自分の手元に取り出せる状態にしておくことは、ベンダーロックインの回避という以上に、個人情報の管理主体としての基本でもあります。

無料プランは累計3枚まで(クレジットカード登録不要、Googleログインのみ)。まずは手元の名刺3枚で読み取り精度だけ確かめてみてください。名刺交換後のフォローの具体的な進め方は交流会の名刺、その後どうしてる?で、Excel運用の設計は名刺をExcel・スプレッドシートで管理する方法で書いています。

よくある質問

Q. 名刺は個人情報にあたりますか? A. あたります。個人情報保護法2条1項は氏名等により特定の個人を識別できる情報を個人情報と定義しており、氏名が記載された名刺はこれに該当します。会社名や役職しか意識していなくても、氏名がある以上は個人情報です。

Q. 名刺交換した相手に営業メールを送っていいですか? A. 個人情報保護法上の利用目的の通知・公表義務との関係では、個人情報保護委員会FAQ Q4-16が、名刺交換の相手には広告宣伝の冊子・電子メールが送られてくる一定の予測可能性があるとして、法21条4項4号の適用除外に該当すると解しています。ただしこれは通知・公表義務の免除であり、送信自体の全面的な適法性保証ではありません。特定電子メール法の受信拒否対応は別途必要です。

Q. メールがOKなら電話も同じ扱いですか? A. 同じとは言えません。FAQが明示するのは「冊子」と「電子メール」だけで、電話は文言上一切列挙されていません。電話については個人情報保護法ではなく、特定商取引法の電話勧誘販売規制を確認する必要があります。

Q. BtoBでも特定商取引法の電話勧誘販売規制はかかりますか? A. 原則かかりません。26条1項1号が「営業のために若しくは営業として締結する」取引を適用除外としており、16条の事前告知・17条の再勧誘禁止・書面交付・クーリング・オフはこの除外の射程に入ります。ただし判定は契約の目的で行われ、実質が個人用・家庭用であったり事業実態のない零細事業者の場合は適用される可能性が高いとされています。

Q. AI架電で「AIです」と告げる義務はありますか? A. 特定商取引法上、明文の義務はありません。16条の告知4項目にAI・自動音声は含まれていません。ただしAI事業者ガイドラインが透明性を原則に掲げており、法的義務がないことと告げないことが望ましいことは別です。

Q. 名刺管理アプリに名刺を登録するのは第三者提供にあたりますか? A. 本記事の射程を超えるため断定を避けます。クラウドサービスの利用形態(事業者がデータを取り扱うか否か)によって整理が変わる論点で、個別の検討が必要です。少なくとも、利用するサービスがどこにデータを保存し、いつでも自分の手元に取り出せるかは、選定時に確認しておくべき点です。

まとめ

  • 名刺は個人情報にあたる(法2条1項)。公開情報だから自由、は成り立たない
  • 名刺交換で得た連絡先への冊子・メール送付は、通知・公表義務が免除されうる(PPC FAQ Q4-16/法21条4項4号)
  • その根拠は「名刺交換」という取得の状況にある。 リスト購入やWeb収集には及ばない
  • FAQは電話に一切触れていない。 電話は特定商取引法の領域で、BtoBは26条1項1号により原則適用除外
  • AIによる架電の告知義務は特商法上存在しないが、ガイドライン上の透明性の要請は別にある
  • 実務では取得経路と取得日を記録に残すことが最も重要で、最も抜けやすい

名刺を「個人情報として適切に扱う」ことと、「名刺を活かしてフォローする」ことは対立しません。どこで・いつ受け取ったかが記録されていれば、両方が同時に成り立ちます。

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※本記事の注記: 本文中の法令解釈は、以下の一次ソースに基づき執筆時点(2026年8月)の内容を確認したものです。個人情報保護委員会 FAQ Q4-16( https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q4-16/ )、個人情報保護委員会 個人情報保護法についてのQ&A( https://www.ppc.go.jp/personalinfo/faq/APPI_QA/ )、特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号)e-Gov法令検索( https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057 )、消費者庁 特定商取引法ガイド 電話勧誘販売( https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/telemarketing/ )。特定商取引法26条の適用除外に関する解釈は消費者庁の逐条解説によります。米国FCCの2024年2月の判断は参考情報として記載したものです。

本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別事案の判断は弁護士等の専門家にご確認ください。法令・ガイドライン・FAQは改正されることがあるため、実務適用の際は最新版をご確認ください。Die Cardは当メディアの運営元が提供するサービスであり、記載の仕様・価格(テスト価格)は執筆時点の一次情報です。